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気管支喘息と鼻のコントロールについて
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「気管支喘息」と「アレルギー性鼻炎」は高率に合併します。
鼻から気管までは気道としてつながっていますので、両方の病状は一致することが多いです。
特に低年齢のお子様で、鼻が弱い、兄弟児がいる、保育園などの通園で感染の機会が多い場合は、喘息を発症したり、喘息発作の誘因となったり、中耳炎を繰り返すことが多々見られます。
年齢が進むと透明の鼻汁が先行した後に喘息発作が見られたり、副鼻腔炎を合併して喘息の原因になることもあります。
鼻をコントロールするために、抗アレルギー薬やステロイド薬の点鼻をすることで、喘息発作の減少がみられるデーターもあります。鼻を制するものは、喘息コントロールの早道です。
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喘息と運動について
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喘息児にとっては、運動によって発作が起きてしまう反面、喘息には鍛錬が効果的であること、運動ができるようになると性格的にも改善できたとういうデーターもあり、運動発作をなるべくコントロールして大好きなスポーツを楽しんでほしいと思います。
重症度が高く、発作を頻発している時、気温が低く乾燥している時(冬の季節です)の長時間のスポーツや、強度の高いスポーツ(マラソンなど)は運動発作が起きやすいので、まずは喘息のコントロールすることが大切です。運動発作の予防には、運動前の抗アレルギー薬や交感神経刺激剤の吸入薬が効果的です。重症の場合は運動の強度を考えることをしてもらっています。
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喘息のコントロール法について
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喘息は、他のアレルギー疾患と同じで、初期治療で無症状に近づけていくのが大切です。
寛解するためには、無症状期間をなるべく長く(できれば半年間以上)することが必要であると言われています。
また、小発作でも1週間、中発作でも2週間、大発作だと3週間、気道過敏性(ゼイゼイしやすさ)が高まるとされていますので、なるべく発作をおこさない。おきても軽い発作で済ませるようにしたいのです。
このためには、発作の誘因、原因を常に分析し、次の発作を起こさないように先手の治療を行ったり、起こった発作に的確に対処する。そのような自己管理ができるようにもっていければ理想です。
クリニックの診療ではなかなかできていないのが現状ですが、喘息日誌をつけたり、ピークフロメーターを用いてモニタリングすると、よりコントロールが可能になります。
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喘息の治療の目的について
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症状の無症状化を早期に図ると共に、日常生活が普通に送れるのが目標です。
具体的には次の項目がクリアするイメージでいてください。
(1)日常生活を普通に送ることができる
(2)保育園や幼稚園、学校を休まない
(3)一日中発作がおきない
(4)薬をほとんど使わない
(5)呼吸機能が保たれている
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重症度別の治療方針について
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喘息の重症に応じて、治療を決めます。
ただ、新患の方の場合は、前医の治療での重症度を加味しながら治療を決定します。
(ステップ1)
間欠型
【基本治療】コントローラーなし
【追加治療】抗ロイコトリエン薬、気管支拡張薬で短期間で改善します。
(ステップ2)
軽症持続型:時々呼吸困難があるが、日常生活は大丈夫。
【基本治療】吸入ステロイド薬(低用量)あるいは抗ロイコトリエン薬
(ステップ3)
重症持続型:頻回に呼吸困難があり、日常生活に支障がある。
【基本治療】吸入ステロイド(高用量)と抗ロイコトリエン薬の併用
【追加治療】吸入ステロイド薬の増量、β2刺激薬の貼布薬の併用、経口ステロイド薬
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喘息の治療について
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喘息の治療は、発作維持の気管支の収縮を広げて呼吸を楽にすること(発作を止めること)と気管支の慢性の炎症を抑えて根本治療をすることの2つの目的があります。
「リリーバー」発作を止める薬
・β2刺激剤(メプチン、ホクナリン、ベネトリンなど)
内服薬、吸入薬があります。
・テオフィリン製剤(テオドール、ユニフィルムなど)
内服薬、注射薬があります。
その他発作時にホクナリンテープを使う場合がありますが、即効性はありません。
「コントローラー」気道の状態をよくする薬で、長期的に使用します。
・吸入ステロイド薬(パルミコート、フルタイド、キュバールなど)
吸入薬です。
・吸入ステロイド+長時間作動β2刺激薬(アドエアなど)
吸入薬です。
・抗ロイコトリエン薬(オノン、シングレア、キプレスなど)
内服薬です。
・抗アレルギー薬(インタール、アレグラ、クラリチンなど)
内服薬、吸入薬があります。
・テオフィリン製剤(テオドール、ユニフィルムなど)
内服薬です。
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発作の重症度について
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喘息の重症度は1回1回の発作の程度と頻度で分類します。
(ステップ1/間 欠 型 )
年に3~4回軽い発作がある。
(ステップ2/軽症持続型)
小発作・中発作が月に1~3回ある。
(ステップ3/中等症持続型)
小発作が週に1~3回・大発作が月に1~2回ある。
(ステップ4/重症持続型)
小発作が毎日・中、大発作が週に1~2回ある。
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喘息発作の対応について
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「小発作」
安静にして、発作止めの薬を服用します。
発作が度々起きるときや以前に重症発作の既往がある場合は、早めに外来を受診してください。
「中発作」
すぐに発作止めの薬を飲ませたり、吸入を行います。
ともになるべく早く外来を受診してください。
「大発作」
すぐに発作止めの薬をのませたり、吸入を行います。
ともに急いで救急外来を受診してください。
症状が重い場合や呼吸不全の場合は、救急車を呼んでください。
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喘息発作の程度について
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発作の対応には、正確に程度の把握をすることが大切です。
どれくらいの発作が、どれくらいの頻度で起きているかを把握することで、治療方針を立てることが出来ます。
「小発作」
ゼイゼイ・ヒューヒュー(喘鳴)は軽く、食べたり眠ったり話したり等の日常生活は普通に送れる状態です。
ただ、走ると咳き込んだりすることがあります。(SpO2/96%以上)
「中発作」
明らかに喘鳴がわかり、横になると苦しいため起き上がります。(起座呼吸)
食事がしにくくなり、会話も息継ぎが多くなります。眠っても苦しさで時々目を覚まします。
肩で息をしたり、陥没呼吸といって喉や肋骨の間が引っ込むようになります。(SpO2/95~92%)
「大発作」
喘鳴は強くなり、遠くでもわかるようになります。
呼吸困難が強く前かがみの状態になり、歩くこともできなくなります。
会話もとぎれとぎれで、食事もできなくなります。
シーソー呼吸と言って息を吸うときに胸がくぼんでおなかが膨らむ呼吸になります。(SpO2/91%以下)
「呼吸不全」
喘鳴は更に強く聞こえます。
呼吸不全が進むと、むしろ減少ないし消失します。
会話は困難になります。
ぐったりし、意識も低下して顔色が悪く口唇が紫色(チアノーゼ)になります。(SpO2/91%未満)
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喘息の診断について
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「ゼイゼイ・ヒューヒュー」した喘鳴とともに息苦しくなることを繰り返している場合は、明らかに「喘息」と言えますが、簡単に診断できない場合もあります。
特に低年齢のお子様の場合は、気管が大人に比べてもともと細く柔らかいので、風邪をひくと喘息に似た症状が出てくることがあります。その場合は、下記を総合的に判断し診断する場合もあります。
アレルギー検査
今までのアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎の既往の有無
家族にアレルギーの人がいるか
症状は朝晩に酷くなっていないか
実際の発作が気管支拡張薬の吸入で効果があるかどうかなど
この点は、疑わしい時は喘息として扱い、なるべく早期に無症状をはかる方がいいと考えられています。
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喘息の検査について
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小児喘息の原因は、大部分がアレルギー性ですので、「アレルギー検査」で誘因抗原を調べます。
※「アレルギー検査」についてはアレルギー基礎編/アレルギー検査についてにて説明しています
また、喘息は呼吸器の病気ですから「呼吸機能検査」があります。
スパイログラムを用いたフローボリュームカーブ曲線により、呼吸機能を測定する検査です。
この検査は、末梢の気道の閉塞まで測定できますので、喘息パターンもわかりますし、発作も鋭敏に測定できます。ただ、低年齢のお子様は測定できないのが欠点です。
簡易的な方法として、ピークフロメーターがあります。自宅でも測定できますので、毎日の状態を見るのみ役立ちます。
専門病院では、呼吸中の一酸化窒素(No)で気管支の炎症の程度を見たり、薬物の吸引や運動前後の呼吸機能の変化により気道過敏性の検査を行っています。
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喘息の誘因・原因について
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喘息発作を起こす原因は、個人や年齢によっても差は見られます。
アレルゲンとしてダニ・カビ・ペットなどの毛などの吸入性抗原、ライノウイルス等の感染、天候(気温や気圧の変化)、タバコや線香の煙、大気汚染、車等の排気ガス、激しい運動、ストレス、ホルモン変化等です。
これらは、個人によって違うのですが、年齢によっても差が見られます。
低年齢では、感染に伴う発作が大部分ですが、少しずつ天候や気温差によっての発作が増え、季節の変わり目や秋に起こしやすくなります。
一つ一つの発作の誘因や原因を分析することは、次の発作を予防して対策を立てるためには大切なことです。
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喘息の本態について
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喘息の本態は、「気管支の粘膜の慢性の炎症」であると言われています。
気管支の粘膜に常に炎症があると、簡単な刺激で粘膜が腫れ、痰が出やすくなり、気管支の周りの筋肉が縮んでしまいます。気管支が細くなることで、ゼイゼイして苦しくなる。これが「喘息発作」です。
そして、喘息の本態である炎症を治さないと、気管支がどんどん固くなってしまい、治らない気管支に変化すると言われています。これをリモデリングと言ってこの状態になる前に早め(出来れば2歳迄)に炎症対策をする必要があります。
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喘息とは?
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呼吸をするときの空気の通り道を「気道」といいます。
鼻や口から入った空気は、のど、気管、気管支、細気管支、肺胞と枝分かれした「気道」を進みます。
「喘息」はこの中で気管支のところが閉塞し、ゼイゼイ・ヒューヒューしながら、息を吐くときの呼吸困難を繰り返して起こるものです。
小児期に発症した喘息を「小児喘息」と言いますが、大部分はアレルギー体質を持った人に、ゼイゼイしやすさ(気道過敏症)が加わって発症します。そして、アレルギーを起こす大部分はダニです。一方、大人で発症した喘息は、アレルギー体質に関係なく気道過敏症のみで発症することがほとんどです。